Arantium Maestum

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誰にでもはできない

好きな作家を挙げろと言われたら誰を入れるかかなり悩むが、現代作家の中では町田康舞城王太郎酒見賢一古川日出男あたりは固いところだろう。あと森見登美彦佐藤亜紀もだな。西尾維新ツンデレ気味のアンビバレンスである。

その中で、一番作中の言葉がしっくりくる作家が舞城王太郎である。西尾維新のような洒落ではなく、ふとした言葉に「そうだよな」と頷かされる。

そして彼の作品の言葉の中で最も記憶に残ったのが以下のものだ。

コツさえ掴めばできる。誰にでもは無理だが、そもそも本当に誰にでもできるものなどないんだ。食事だって排泄だって睡眠だって呼吸だって、できない奴にはできないのだ。

奈津川サーガの第1作である「煙か土か食べ物」に出てくる言葉である。

軽快というより疾走といった感のあるスピーディな文体(2ちゃんでひどいラノベ文章の例に使われていたのには笑った)で過剰なまでの暴力と感情を描写した傑作で、主人公の四郎の断定的な物言いが痛快である。その一つが上の独白である。

食事、排泄、睡眠、呼吸。生きるのに必要なそれらだってできない奴はできない。況や他事においてをや、である。自分でも他人でも、できないのはおかしいことではない、でもコツを掴めばできるかもしれない、というのを原点にするのは不思議なほどストンと腑に落ちた。

まあ何が言いたいかというと、好き好き大好き超愛してる舞城王太郎、ということだ。

余談であるが、時差ぼけの頭でエヴァQを見に行って巨神兵が出てきた時はびっくりしたが、その後エンドロールで脚本が舞城王太郎だった時の方がびっくりした。考えてみれば脚本舞城、朗読林原めぐみというのは豪華だった。