Arantium Maestum

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『数学文章作法 基礎編』

結城浩『数学文章作法 基礎編』を読んだ。

プログラマの数学」「数学ガール」の著者らしく、実に明快で読みやすかった。

テーマがまったくぶれないのがすごい。

「読者のことを考える」がものすごく太い線として常に中心にある。その中心テーマをめぐっての個別のテクニックをうまく章わけして解説していく、という形式になっている。「こういう風に書きましょう」という提言とともに、必ず「それによって読者にどう伝わりやすくなるのか」も提示される。

すでに伝えたいこと、書きたいことが決まっていることが前提で、「面白くする」というのは書き手独自のテーマのほうに任せて、本の内容はどのように書けば平易かつ親切な、読みやすく読みたくなるような文章になるかにフォーカスをあてている。

基本スタンスは:

  • 読者の脳内で起こることをシミュレートして
  • 無駄なひっかかりや違和感をできるだけ排除
  • 生じた疑問はできるだけ生じた箇所の近くで解決

以下のポイントを特に面白く感じた:

  • 既知から未知、具体から抽象への流れを明確に意識すること
  • パラレリズム、内容が対比となっているものは形式も対比させる
  • 数字や数式には文章でメタ情報を付与する
  • 問いかけや例示の上手・下手

「熱量の演出によって無関心の人の興味をつかむ」ではなく「伝えたいことを、知りたいと思っている人に、上手に伝える」ハウツー本。

姉妹本の『数学文章作法 推敲編』も近いうちに読みたい。