Arantium Maestum

プログラミング、囲碁、読書の話題

基本死活(1)

いきなり尾籠な話で恐縮だが、三月初頭からトイレ読書は「基本死活事典」に絞っている。

囲碁において、「死活」という概念は一種根源的なものである。囲碁のルールは基本的には非常に簡単で、端的に言えば「交互に打つ」、「囲まれたら取られる」、「お互いに囲まれた場合は最後に打ったほうが優先」という考えがゲームをあらかた定義している。それらから「相手がどう打っても取られない石」つまり二眼という概念が自然発生し、最終的に勝ち負けを着けるため「盤上により多くの死なない石を置いたほうが勝ち」*1というルールが加わる。

囲碁を打っていく中で現れがちな石の形の、「相手の打ち方如何では死ぬ石」「死なない石」への分類が「死活」である。分類のために最適な手順を知ることは重要ではあるが、その手順も一通りである必要はなく、周りへの影響を踏まえたうえで複数の「ありえる手順」が存在し得る。あくまで本質は「特定の石の形の状態」であって、正しい次の一手を問う詰碁とは少々趣が異なる。

囲碁を打つにあたって「この石は生きているか・死んでいるか」という判断は終局に必要不可欠となる。級位が低いうちは対局者同士でその判断が食い違っていて争いの元になることもある。そうはならなくとも、弱ければ弱いほど生死の定まった状況で打ち続け、また間違えることによって生死の結果が入れ替わったりする。そして一つの石の集まりが生きるか死ぬかで二十目や三十目は違う。

死活に敏になることは囲碁の実力の最重要な事項の一つであることは間違いない。(続く)

*1:これはどちらかというと純碁的な発想である